3月16日、定例会最終日の本会議にて、日本共産党県議団を代表し、来年度の一般会計当初予算案など予算案3件、条例案14件について委員長報告に反対する討論を行いました。
日本共産党の大国陽介です。日本共産党県議団を代表して、予算案3件、条例案14件について委員長報告に反対する討論を行います。
第2号議案「平成28年度島根県一般会計予算」
はじめに、第2号議案「平成28年度島根県一般会計予算」についてであります。
今、国の政治はどうでしょうか。
安倍政権は、アベノミクスと称する経済政策で、円安や株高にすれば企業の儲けが増え、雇用や賃金も回復して消費が拡大すると宣伝してきました。一昨年の4月には消費税を増税しましたが、その影響も短期間で収まると主張してきました。ところが、大企業の儲けは増えても賃金や雇用は改善せず、消費の低迷は長引き、GDPはマイナス成長です。
介護報酬の引き下げや、生活保護の縮減、年金の実質的な減額、医療の負担増など、社会保障の切り捨ては国民の生活を苦しめています。TPPへの参加は、低米価に頭を悩ませる農家や自然災害からの復旧をめざす農家の意欲をさらに失わせ、農業の衰退に一層の追い打ちをかけています。
加えて、立憲主義と平和主義を否定する戦争法の強行、消費税の10%増税、原発再稼働など、国民の願いに応えない政治が続いています。
国の政治がひどい時だけに、県政が県民のくらしと福祉を守るという自治体本来の役割を果たそうとしているのか、その姿勢が鋭く問われています。
今地方は、住民のくらしの困難、福祉・医療の危機、地域経済の衰退など、深刻な問題に直面し、先が見通せない状況が広がっています。この県民の苦しみにより添い、住民のくらしと福祉優先の県政が強く求められています。
来年度予算案では、第3子以降に加えて第1子・第2子の保育料軽減、病児保育開設経費への上乗せ補助、児童クラブへの支援、35人学級の完全実施などが措置されています。子育て世代をはじめ、多くの方から歓迎の声が寄せられており、子育て支援拡充に向けて一歩前進であると評価するものであります。
しかし、住民合意のない道路建設や大企業優遇の産業政策の一方、県民のくらしを支える介護保険や国民健康保険などの社会保障予算や県内経済の根幹をなす中小業者への支援、本県の基幹産業である農林水産業への支援が不十分であります。また、子どもと教育現場にとって圧力でしかない学力テストは中止するとともに、就学援助の拡大や給付型奨学金の創設など、子どもの貧困対策を抜本的に強化すべきであります。
国いいなりの県政を大本から転換し、原発撤退の決断、TPPへの参加反対を国に訴えることを強く求めるものであり、医療・介護などの社会保障予算を抜本的に引き上げるなど、県民のくらしと安全、福祉最優先の県政へと転換を図るべきであります。
以上の立場から、一般会計予算には反対であります。
第15号議案「平成28年度島根県病院事業会計予算」
次に、第15号議案「平成28年度島根県病院事業会計予算」についてであります。
県立中央病院では、希望者に対して看護師の2交代勤務が行われています。2交代勤務は、看護師の健康の悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては、安全・安心な看護の提供の面から有害であります。
県民誰もが等しく、安心して県立中央病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料徴収など、保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証1枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきです。
この立場から、病院事業会計予算には賛成できません。
第18号議案「平成28年度島根県水道事業会計予算」
次に、第18号議案「平成28年度島根県水道事業会計予算」についてであります。
江の川水道事業や斐伊川水道事業は、積算根拠、需要予測を誤ったため、使わない水まで住民負担となっており、市民に高い水道料金が押し付けられています。さらに、各地で簡易水道の統合に伴う料金値上げも実施または予定がされています。県として、受水団体の資本費負担軽減を図るなど、財政措置を講じるべきです。
よって、水道事業会計予算には反対です。
第20号議案「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例の一部を改正する条例」
第31号議案「住民基本台帳法施行条例の一部を改正する条例」
次に、第20号議案「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例の一部を改正する条例」並びに、第31号議案「住民基本台帳法施行条例の一部を改正する条例」についてであります。
これらの条例改定案は、マイナンバーを法律で規定された事務に加え、本県独自での利用を規定するためのものであります。マイナンバーは、徴税強化や社会保障費抑制を狙った政府の動機から出発したもので、国民には不利益ばかりです。
そもそも、全住民を対象にした制度を掲げながら、いまだに多くの世帯で「通知カード」が届いていません。昨年、日本年金機構から膨大な個人情報がもれ、大問題になりました。マイナンバー制度で個人情報が一元管理されることに対して、国民の不信と不安はなんら払しょくされていません。
矛盾と問題点が次々と浮き彫りになる中、利用範囲を拡大するのではなく、マイナンバー制度は中止・凍結し、廃止への検討を行うことが必要です。
よって、これらの条例には反対です。
第21号議案「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例」
次に、第21号議案「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例」についてであります。
今回の条例制定のもととなった法律は、地方公務員について、これまでの勤務評定を廃止し、能力評価と業績評価を二本柱とする人事評価制度を適用するものです。任命権者はこの人事評価を任用、給与、分限その他の人事管理として活用するとしています。
この人事評価の導入は、憲法がうたう全体の奉仕者として、公正中立の立場に立って国民の権利と福祉の実現のために、その能力を発揮することが求められる地方公務員の役割を大きく変質させるものになりかねません。
よって、本条例には反対であります。
第25号議案「職員の管理職手当の特例に関する条例の一部を改正する条例」
次に、第25号議案「職員の管理職手当の特例に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、職員の管理職手当の減額を平成29年3月31日まで、一年間継続して実施する為のものであります。
この間の職員定員削減で、職員の業務量は増大し、管理職をはじめ、職員の労働条件は悪化の一途にあります。県職員給与は、公務員労働者の生活だけでなく、年金、最低賃金、生活保護費の基礎ともなり、その引き下げは、消費購買力の低下につながり、地域経済の建て直しにマイナスの影響を及ぼします。県職員給与引き下げは、民間の賃金引き下げにつながり、賃下げの悪循環を招くことは明白です。
よって、本条例には反対であります。
第34号議案「島根県後期高齢者医療財政安定化基金条例の一部を改正する条例」
次に、第34号議案「島根県後期高齢者医療財政安定化基金条例の一部を改正する条例」についてであります。
後期高齢者医療の財政安定化基金への拠出割合は、広域連合が3分の1、国と県が同額の3分の1ずつを拠出することとなっています。本条例は、その拠出率を引き下げるものであります。
2016年4月から75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度の5回目の保険料改定が行われます。島根県では、対前期比6・5%もの値上げが予定されています。
現在、島根県には、約18億円もの財政安定化基金があります。今、やるべきことは、高い保険料を引き下げるために、基金を取り崩すことです。今回の拠出率引き下げは、国や県の財政支援額の後退であり、本条例には反対であります。
後期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで負担増と差別医療を押し付ける悪法です。すみやかに制度を撤廃し、元の老人保健制度に戻すことを強く求めます。
第35号議案「島根県国民健康保険財政安定化基金条例」
次に、第35号議案「島根県国民健康保険財政安定化基金条例」についてであります。
本条例は、2018年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となることに伴い、県に財政安定化基金を設置するものであります。
国保の都道府県化は、市町村が独自に決めていた保険料を「平準化」させることなどを通じて、住民に保険料の負担増や保険料徴収の強化をもたらす仕組みになっています。
高すぎる国保料が払えず、滞納世帯が続出している「国保の構造的危機」を解決するには、「都道府県化」は逆行そのものです。国保への国庫負担の大幅増額なしに、問題の解決はありません。
よって、本条例には反対であります。
第36号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例」
第39号議案「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例及び島根県児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例」
次に、第36号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例」並びに第39号議案「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例及び島根県児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例」についてであります。
これらの条例は、県が指定・監督を行う通所介護、療養通所介護が、本年4月から市町村が指定・監督を行う地域密着型サービスに移行することに伴い、地域密着型通所介護等事業所において、障害福祉サービスや自立訓練サービスの提供を可能とするものであります。
介護保険は、国が責任を持ち全国一律の基準・価格、サービス標準を決めていました。しかし、この間、権限やサービス運営が保険者である自治体へ丸投げされつつあります。
保険者が指定権限を持つことは、ケアマネジメントに対し、何らかのプレッシャーを与えることが危惧されます。また、障害者福祉と介護保険との連携・統合の方向は、当事者の負担増と国の責任後退をもたらすものであります。
よって、これら条例には賛同できません。
第41号議案「島根県病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例」
次に、第41号議案「島根県病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、県立中央病院の一般病床を633床から588床へと45床削減するものであります。
わが党は、病床の削減に対して、一律に反対するものではありません。しかし、災害時医療、救急医療、へき地医療など、採算の採れにくい医療に対する力の発揮こそ自治体病院の使命であり、採算性を重視しすぎて人員、体制、医療物資などギリギリの状態で運営することは、不測の事態に対応できないことが危惧されます。
また、現在、必要病床数を推計する地域医療構想の策定過程であり、現時点で中央病院の病床削減を決めるべきではありません。
よって、本条例には反対です。
第42号議案「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例」
次に、第42号議案「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例」についてです。
本条例は、小中一貫教育として、小学校と中学校の教育課程を統合した「義務教育学校」を創設するものであります。
小中一貫校の実態について、国として調査したものがほとんどなく、教育的効果や問題点が検証されておりません。また、義務教育学校創設は、小学校段階から複数の教育課程が設けられ、教育の機会均等を崩す恐れがあります。そして、義務教育学校創設は、学校統廃合をさらに加速させる手段となりかねないものです。
よって、本条例には反対であります。
第43号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」
次に、第43号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、児童数及び生徒数の変動等に伴い、職員定数を改正するものであります。
島根県の小・中学校の少人数学級編成や特別な支援を要する児童を支援するに対しての非常勤講師配置事業については、評価するものであります。
今、学校現場に求められるのは、教員の多忙化を解消し、ゆきとどいた教育を実現すること、教職員がいじめに向き合う条件整備を強化することであります。そのためにも職員定数の大幅な拡充が必要であり、定数を削減する本条例には賛同できません。
第45号議案「知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例の一部を改正する条例」
次に、第45号議案「知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。
今回の条例改定は、2ヘクタールを超える4ヘクタール以下の農地転用許可の事務を市町村へと移譲するためのものであります。
食糧生産の基盤である農地は、生物多様性や多面的機能の見地からも重要であり、転用は極めて慎重に行わなければなりません。これまでは、農地転用規制の実効性を確保する観点から、許可権限が地元の利害関係者から切り離されることによって、その客観性が担保されてきました。しかし、今回の権限委譲によって、許可権者と利害関係者の距離が近くなることで、許可するか否かの判断に少なからず影響が生じ、規制の実効性が弱まることが懸念されます。
よって、本条例には反対であります。
第80号議案「島根県県税条例等の一部を改正する条例」
次に、第80号議案「島根県県税条例等の一部を改正する条例」についてであります。
本条例改定は、外形標準課税の対象となる法人の事業税の税率を変更し、所得割を引き下げ、外形標準課税の付加価値割と資本割の比率を高めるものであります。付加価値割に対する課税は、税額を報酬給与総額から算出するため、赤字でも雇用を拡大し、賃金を多く払っている企業には負担が重くなる仕組みになっています。稼ぐ力のある大企業に有利に働き、赤字でも頑張っている企業には不利になるという不公平なものと言わなければなりません。
よって、本条例には反対であります。
第81号議案「島根県児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」
最後に、第81号議案「島根県児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、保育士不足に対処する施策として、第1に、朝夕の保育士配置基準を2人から1人にすること。第2に、幼稚園・小学校の教員免許があれば、保育士として働けること、第3に、研修などの代替え要員は、保育士でなくてもよいものとするなど、保育士配置の最低基準を緩和するものであります。
保育所の朝夕は、登園やお迎えの時間帯で、保護者と保育士が子どもの健康状態や家庭や保育所での子ども様子などを伝え合い、意思疎通を図る大切な時間であります。保育士2人を下回らない最低基準は、子どもの発達保障にとって最低限のものであります。人員確保の基準緩和や資格要件の緩和は、保育の質の低下に間違いなくつながります。
よって、本条例には反対であります。
以上で討論を終わります。